こんにちは、はね子です。
世のドールオーナーの皆さん、『ドルおじ #ドールに沼ったおじさんの話』(以下、ドルおじ)3巻最高でしたね。私も発売日にKindle版で買いました。Webで一度読んでるとはいえ、コミックスはまとめて読めるのが良い。そろそろ紙媒体も欲しくなってきた。
ここ数日読み返しながらホクホクして良い気分になってたんですが、ふと思い出したんです。
私、こんなに『ドルおじ』に幸福にさせてもらえてんのに感想書いてなくね??
……てなわけで、書きます⭐︎
はじめに
本記事は、さとうはるみ先生の『ドルおじ #ドールに沼ったおじさんの話』(新潮社)のネタバレ感想レポートになります。
ネタバレ含むところは折り畳み機能使いながら隠してますが、基本的に本記事を読むことはネタバレに了承したとみなしますのでご注意ください。
また、本記事内の画像は電子コミックスから引用させていただきました。転載禁止です。万が一、関係者様がご覧になられて、問題と判断なされた場合は掲載を取り下げますので、恐れ入りますが「お問い合わせ」よりご連絡ください。
それでは、興味がある方はお読みいただければなと思います。
作品概要
主人公「矛橋真澄」(42歳)のドール邂逅からその魅力に沼る(ハマる)過程を非常に丁寧に描いた、ドール趣味をしている人なら誰もが「分かるっ…!!」となるネタ満載の作品です。
Twitterで大バズりしたことから連載化し、現在は「コミックバンチKai」にて配信中。コミックスも3巻まで発売しています。
たくさんのドールあるあるがふんだんに含まれていてドールオーナーなら誰もが楽しめるのですが、個人的に1番の魅力は「ドールに興味がある人(まだドールを所有していない人)にとってかなり役に立つ教本である」こと。私も1体目のドールお迎え前にこちらの作品を読み、「絶対にドールをお迎えしたい!」と固く決意するきっかけの一つとなってくれました。
主人公の真澄さんが初心者なので、先輩ドールオーナーの星野くんに支えられながらも、ドールオーナーとして一歩ずつ成長していく様子が非常にリアル。また、ドールを通した繋がりから人間的にも進化する様子も見届けられます。
作者である「さとうはるみ」先生が、「全人類を人形沼に沈めること」を目標としていることもあり、非常に優しくドールの魅力とドールを所有する意義を教えてくれる、そんな作品なのです。
とにかく最高なので、ドールに少しでも興味があるのなら必読書籍といえます! いや、もう単純に物語としても物凄く面白いのでドールに興味がなくても読んでくれ!!
なお、LINE漫画やピッコマなどを利用すれば無料で読めますが、読み返して欲しいので書籍・電子コミックスなどでの購入をお勧めします。
感想
ではここから各巻の感想を述べていきます。なお、各話感想部分はかなり主観的な感想(ぶっちゃけると感情大爆発してる)なのでご注意下さい。長いぞ!
1巻感想
主人公の真澄さんがドール「Starlet(スターレット)」と邂逅する様子が描かれる本巻。これまでの人生で何にも惹かれるものがなかった真澄さんが初めて自分の心と向き合った感動満載のお話が収録されています。
突然のドールとの邂逅に戸惑いながらも、スターレットや他のドールオーナーの優しさに触れて、満たされた心のお陰で自分も周りに優しく接することができるようになる。
人間は、幸福で心に余裕がある間は他人に優しくなれて、余裕がなくいつも苦しい状況だと他人に厳しくなってしまう。真澄さんもまさしくそういう人間らしいキャラクター性で、ドールに触れるようになってからドールと出会ってから非常に柔らかい微笑みが増え続けているのが印象的でした。
超細かい各話への感想(クリックで展開)
第1話「Starlet」
本話は初回なだけあって、とびきり最高な1ページ目が堪能できました。
「ウィドマンシュテッテン」「モルダバイト」とはいずれも宝石の名前で、その宝石を再現したカラー描き込みの美しさに息をのむ。
私はLINE漫画でこの作品と出会ったため、初見はモノクロでした。もちろんモノクロ状態でも十分美しく「この作品は当たりだな!」などと思えるのですが、是非とも1話は掲載WEBサイトである「コミックバンチkai」を見て欲しい。まるで宇宙を描いたような吸い込まれる作画です。正直「初めてをカラーで見たかった……」と思っちゃったくらいにはカラーがマジで最高なんですよ。まだ読んでいない人はホントにカラーで見て……。
人としては勝ち組ともいえる生活を送っていた主人公の真澄さん。一見すれば羨ましがられる人生な反面、心にぽっかりと空洞を作っている様子がまさに現代日本の社会人。私はまだ真澄さんほど人生経験を積んでいませんが、定年間近な父が「退職してから何も趣味がないのは嫌だ」と言ってギターを習い始めた経緯を知っているので、何かに打ち込める機会を欲して心の豊かさを求めている人は多いんじゃないかなと感じています。
そして、真澄さんが無意識のうちに手を出してしまったのが、エーテルドール「スターレット」。ドールの知識なんて全くないのに、ただ心のままオークションに参加することを静かに決意する。ここが第1話で私が1番好きなシーン(もちろん他にも素敵な描写はいっぱいあるんだけどね!)。
この後入札金額が恐ろしいことになっているオチも含めて楽しい。でも実際にオークションに参加する場合はマジで金額管理気を付けような!!
第2話「#うちのこかわいい」
本話のタイトルにもなっている「#うちのこかわいい」の存在を、私は本作で初めて知りました。こちらは現実に存在するハッシュタグで、ドールオーナーさんによる珠玉のうちのこ写真をX(旧Twitter)やInstagramなどで見つけることが可能。私はドールオーナーになる前にこのタグの存在を知れたので、「世の中にはいろんな種類のドールがいるんだなぁ…」と真澄さんと同じ感想を抱いたものです。そして、ドールオーナーになった今は「どの子も可愛いけど、うちの子が可愛い」という感想を抱くのもまた納得。やっぱりね、うちの子の特別感って半端ないんすよ!!
また、本話の見どころの一つが「他者にやさしくなれる真澄さん」。恐らくこれまでの真澄さんは席を譲ったり、他人を褒めたりすることなかったんだろうな…と同僚たちの反応からも分かるんですが、スターレットが届いていないにもかかわらず優しさが溢れだしてました。それだけの多幸感をドールが与えてくれてるって凄くね??
まぁでも、このお話の一番面白いところは間違いなくココ。
ドール買ったと思ったら頭だけ届くとか、もはや1種のホラー。これは事前に知っていないと実際に間違える人は多いかも。特にオークションサイトはヘッド状態のみで出品なのに写真はイメージ画像が設定されていることが多いので(もちろん、複数枚画像を設定してくれていたらヘッドのみの写真がある場合が多いけど)、どうしても写真のまま届いちゃうと思ってしまう人はいそう。私もドルおじで履修してなければ危なかったかもしれない。
あと、単純にゴロンと生首だけ届いたらやっぱり怖いよね。知ってたら「可愛いヘッド来ちゃ~♥」だけど、知らなかったら「え?? これをどうすれば??」と絶対なる。真澄さんもそりゃあこんな顔になるよ…。まぁ大笑いしたんですけど(ひどい)。
第3話「ようこそ沼へ」
ヘッドのみ届いて絶望の真澄さんに同情しつつも、私が初めて本話を読んだ時の感想は「真澄さん、コーラ飲むんだ……」でした。いや、なんかイメージが炭酸飲料飲んでいるって感じでなくて……。あと、この人いったい何本消費したの?? ベッド元に落ちてるペットボトルの量が異常でしてよ。
この後、わざわざ炭酸飲料をシャカシャカ降って口に含んで噴き出すという奇行を発揮。よっぽどの衝撃を受けたんだとしても、なかなか常人にない狂い方である。こいつぁ、おもしれー男だぜ。
ただ救いも早くて、ドールには別売りボディがあることが判明。SNSでフォローをしていたペリメニさんに導かれて心躍らせる真澄さんが妙に可愛く見えました。おじさんなのに! おじさんなのに!!
第4話「white sphere」
まだ見ぬドールオーナーに心を躍らせる真澄さんの前に現れたのは、ペリメニというドールを所有する好青年「星野暁之」くん。ドールオーナーといえば女性という固定観念から女性オーナーを妄想していた真澄さんが「正直少し残念で、安心した」という感想を抱くのは凄く自然だなと思いました。そりゃあドールは女の子のものって思うよねぇ…。私も界隈に入るまでは8:2で女性比率多めって思ってた。実際のところそんなに変わらない気がする。
真澄さんはたぶん「男(おじさん)のくせにドールなんて……」と思っていた節があるんですよね。でも初めて出会えたオーナーはなんと男性で、ドールを可愛いと思うのが普通で自分の感性を認めてくれる同性がいると分かった。それが「ホッとした」という気持ちに現れたんだと思います。
ここ、凄くさらりとした場面なんですけど、心の機微をめちゃくちゃ丁寧に描いてくれているんです。私は女性オーナーなので実際に世の男性オーナーがどう感じているかは分かりませんが、たぶん真澄さんのように感じているオーナーは少なからず存在するとは思っています。そんな男性ドールオーナーを励ますには十分すぎるシーンだと思うのですよね。まじで尊い。
ドール喫茶「ホワイトスフィア」のシーンでも、真澄さんが抱くドール趣味への偏見が語られます。これもまた現実に存在する偏見で、残念ながらドールが万人に受け入れてもらえるものではないことを作者さん自ら認めていることが伺えます。ただそれを「ドールを理解できない人は悪!」と否定するわけでもなく、「ドールを愛する人は気味悪い」と肯定するわけでもなく、「同じ価値観を持つ者同士で認め合えばよい」と諭してくれているところが素敵だなと思いました。そりゃあ真澄さんもドール好きがこぞって通うホワイトスフィアに週2で通っちゃうよねぇ!!
……ねぇ、なんで京都にドール喫茶ないの!??!?!? 国内最大手のドールメーカーといって過言でないボークスのお膝元なのに!!!!!! 天使の里はSD以外ダメだからSDオーナーでない私はどこに行けばいいんですか!?!?!?!?
第5話「底なし」
エーテルドール・スターレットの生みの親「甘仲能人」について語られ、スターレットがドール界隈における”曰くつき”と呼ばれる所以が判明します。ここで初めて真澄さんは、ばらばらにされてしまったスターレットを完全体でお迎えすることはほぼ不可能であることを悟る。
星野君は「ドールを迎えると次々とお金がかかる。そんな現象を界隈では『沼』と呼ぶ」こと、スターレットがその中でも底がないことも教えてくれます。「こんなに丁寧に手取り足取り教えてくれなんて星野君聖人すぎじゃねぇ……?」と初めて読んだときは思ったもんですが、ドール界隈には実際にいる。めちゃくちゃ初心者オーナーにやさしい。
思いつめる真澄さんへ向けた、この格言が大好きです。すべてが完璧にそろったドールももちろん良さはあるけれど、カスタマイズによる”自分らしさをドールにぶつけられること”もドールを所有する理由の1つだと思う(私の場合、おかげさまで自分の性癖がびっくりするほど透け出て来た)。
そして、バラバラになってしまったスターレットの背景を知っていたが故か、星野君のドールにかつて使っていたボディを惜しみなく真澄さんに譲ってあげるのがもう素敵すぎる。ボディってね、真澄さんは「割と安い」と評しているんだけど、結構値段はするんです……。真澄さんはヘッドで約100万使っているから感覚がおかしくなっているだけで低所得な私にとってはボディ1つで結構家計が苦しくなる。そんなボディを譲ってくれる星野君のぐう聖ぶりに感激する。いや、マジで優しすぎるドール界隈では、実際にお古ボディを譲ることってあったりするのか?
また、ここでもう1つ注目したいのが、しっかりと思いを伝えて感謝を述べれる真澄さん。この人少し前まで心空っぽだったんですよ??? 何この素直で優しい人。読んでるこっちも照れちまうだろうが!!!
第6話「おはドル」
星野君からドールバッグも譲られてた。星野君神様なの?
そんな感想飛び出す本話は、スターレットに癒される朝からスタート。ドールと出会ってから上機嫌Max、世話焼きモードへと移行した真澄さん。初めて読んだときは「いやいや、流石にここまでは……」と思ったものだけど、ドールオーナーになった今は「超分かる……」と思う程度にお世話したかった。私の初ドールお迎え時はそこそこヘッド状態が長かったけど、毎日ヘッドを保管していた箱を覗いたし、ドールとして完成してからは毎日髪を梳いた。今はだいぶ落ち着いたけれども本当にお世話したい欲が凄かったです。
ただ、その思いが同僚に伝わるとは限らない。ついついドールへやるのと同じように、同僚にも世話焼きモードが発揮されている真澄さんでしたが、これまでの態度のせいで鬱陶しいと罵られる。
まあ、これは私が同僚「盾前」くんの立場だったら「鬱陶しい」と思うのは当然かも。流石に声には出さんけど。これまで何でも否定するような厳しい上司が、いきなり手のひら返してくるようなもんですからね。信じられないし、「なんだこいつ」と思うのは普通。ドルおじの登場人物たちって本当に心の描写がリアル。
個人的に、今作1のオアシスだと思っている他の同僚である「小松」さん。この子、凄く人をちゃんと見てる。きっと悪い面もたくさん見ているけれど、ちゃんと相手のいいところを探そうとしてくれている。ひどい上司だった真澄さんを知ってるはずなのに否定せず、そんな真澄さんの変化に戸惑い素直になれない盾前くんも否定せず、「誤解しあわないで欲しい」と自分想いを伝えられるなんて素晴らしい心の持ち主だと思う。
1人でコンビニ弁当を食べながら、ちゃんと同僚のことを思いやれるようになった真澄さん。そこでも同じドールオーナーに支えられ、「おはドル」を通して小さな幸せを噛みしめる。真澄さんはここで少しずつ歩み寄ることをきっと誓ったんだと思う。
本当はスターレットへのお土産だった一口チョコを、盾前くんにプレゼントするのは凄く素敵でした。嫌われてるって分かってる相手に話しかけるってめちゃくちゃ勇気がいる行為で、その勇気をドールやドールオーナー、そして小松さんからもらったんだろうな。あと地味に受け入れてあげてる盾前くんも優しい。何だこの幸せ空間、最高か??
第7話「THE CHOICE IS YOURS!」
星野君と秋葉原のドールスポットを回るお話で、実際に存在する「ラジオ会館」や「ドールポイント秋葉原」が登場したりする。私はこの回を読んで、「次東京に行ったら絶対にアキバのドールショップに行くんだ……」と決意したのはいい思い出。
店舗に置いてある即納ドールたちを見て「8万あればお釣りがくる」と聞き、「やっすぅ〜」となる真澄さんは必見。
「安くねぇよ!! 普通に高ぇよ!!!」と当初はこんな感想を抱いた記憶があります。ただ、ドールオーナーになった今、私も真澄さんと同じく8万なら安く感じる不思議。1/6ドールに至っては平均2万とかなので本気で安いと思ってる。金銭感覚がバグるって恐ろしいね!
真澄さんは店頭に置いてあるたくさんのドールを見て、どれもいいなと思いながらもスターレットに似合うお洋服が分からなくなってしまう。
自分のドールに合うお洋服を購入するのは初めてだと意外と難しい。漠然とこういう風になって欲しいという願いがあっても、イメージ通りにならないことの方が多いし、何より自分も「これで良いんかな…」と不安になる。初心者はドール服のサイズもいまいち分からないものなので、1着平均8,000円近いお洋服を買って使い物にならなかったら…と思う恐怖もある。
これは実際にドールオーナーにならないと理解できない悩み。初めて読んだ時、私はドールをお迎えしてなかったので「適当に買っても良いだろうに…」と思ったけど、イメージが強ければ強いほど理想が分からなくなって手が付けられない。
そんな悩みに寄り添ってくれるのも星野君。「ドールは意志を持たない」から全てを自分で決めてもいいと真澄さんを励まします。
ドールオーナーになると必ずぶち当たる壁がドールへの向き合い方。あくまでも物として扱う人もいれば、家族のように接する人もいる。星野君の意見は前者に近いですが、だからといって愛情がないわけではない。「我が子が迷わぬように……」という言葉に、ドールへの深い愛情を感じることができます。
第8話「選ぶのはあなただ!」
前話でのアドバイスを受けて真澄さんが欲望を解放する回。ちゃんと星野君のアドバイスも理解しながら、「ドールに見透かされる気がする」という真澄さん自身の意見もちゃんと伝える。作者さんの意図は分からないのですが、私はこのシーンを見て、たぶん星野君はドールを物として見るオーナーで、真澄さんはドールを家族として見るオーナーとして描いているんじゃないかなぁと思いました。そして、対照的な価値観を持つオーナーであっても尊重しあえるし、理解しあえる。なぜなら根本としてドールに愛情を抱いているのは変わらないから。
さんざん悩んだ真澄さんの結論「スターレットは天使」。直近でバニーガール妄想してた人とは思えない理想像が最高。
いやでも、これもなんとなくわかるんですよ。バニーガールなどの衣装は割と普通に好きだけど、私も自分のドール達には着せたいとは思わない。やっぱりドールへのイメージがちゃんとあるんです。例えば、我が家のドールたちでいうならクドリャフカは牧歌的でふんわりしたお嬢様。イラスベスは割と対照的にモード系が似合うカッコいい女って感じがいい。ライカは小生意気な雰囲気があってほしいけど、ショタ系は嫌だ……みたいな。個々のドールに求める”何か”が絶対的に存在する。意識的か無意識かは関係なく。
凄く曖昧な何かであっても、それを追究する楽しさもまたドールの魅力の1つだと思います。
私が本作通して一番好きなのは、真澄さんのこの言葉。
人はいつだって選択を迫られるもので、その選択は時々自分が予想だにしなかった間違いを引き起こすこともある。選択に後悔したとしても、そこから逃げずに向き合っていく。ドールに対しての言葉ではあったけれども、きっと真澄さんの人生そのものに真摯に向き合うという決意表明のように感じました。
ところで、本話には「我繭音」さんというディーラーさんのお洋服が登場したのですが、このお洋服を現実で再現してくれる方はいないのだろうか。いや、実際に個人で作っている猛者はいるんだけど、私は流石にこのレベルの衣装を作れる気がしないのだよ。『ドルおじ』は日本国内のドールショップにもきっと認知されているのだから、是非とも各社さんがバックについて再現コスチュームとして販売してくれないだろうか。売り出されたら絶対買うよ。もう欲しくてたまらんのだよ!!
第9話「エーテル」
買ったお洋服をすぐに着せたくなるの超分かりみ~!
ドールにお洋服を着せるという行為はオーナーにとったら一大イベントなわけですよ。ドールショップでお洋服を購入した日は、その場で「着替えさせたい!!」という欲を理性で押さえつけてる状況なんです。帰宅したら即お着替え。もうこれは鉄則であり、特大級に帰宅が遅くなってしまったからといって後回しになどできない。睡眠時間削ってでもやるよ、常考。
ドールのお洋服、本当にめちゃくちゃ小さいのに既製品の服と変わらないです。ボタンもあるし、ホックもある。すべてがドールのサイズに合わせて小さくなっているだけで服には変わりなく、生地感も含めその精巧さに驚きました。
ただ、小さいからこそ着せてあげるのは本当に苦戦する。私は初ドールがボークス社のソフトビニール製ミニドルフィードリーム(MDD)だったので、ビスクやキャストドールのようにゴリッとなる感じはなかったのですが、普通にあり得ない方向に手足が曲がるので結構焦りましたね。のちにキャストドールのライカを迎えて、ゴリゴリさせたので初めて触ったときは真澄さんと全く同じ反応しました。
いや、ほんと結構お洋服によっては強めに引っ張ったりする必要もあるんです。そのたびに「す、すまねえ。すぐ終わらせるから許して……ごめん……」と謝り倒すまでがセット。なお、そう思っていても中々着替え終わらないことも多い。真澄さんは2時間かかってるけど割とよくある。たぶん初回はみんなそんなもん。
また、本話は真澄さんによる最高な沼堕ち宣言があります!!
底なし沼に幸せそうに沈む真澄さんにそっと手を差し伸べるスターレット。もうね、ここはね、自分の目で見ないといけないレベルの最上級の描き込み。だからあえて画像の引用は控えてます。いやもうマジで見所いっぱいだけどやっぱりここは一線を画すというか、この話が1巻収録の最終話なのがものすごく納得できる。ここに着くまでも十分引き込まれてたけど、本話でファンになった人も多いんじゃないかな。
あと、初回で真澄さんはこの目標を完成させることが判明しているので、安心して彼を見守れるのも良い演出。限りなく困難といわれたことを、真澄さんがどれほど努力して叶えたのか。それをワクワクしながらお話が読めるのが物凄く素敵だなと思いました。
私が本作を知ったときは1巻のみ発売していた状況だったので、「絶対に2巻買う」と決意した瞬間でもありましたね。
2巻感想
ドールオーナーとの交流が広がり、各オーナーが抱くドールへの想いにたくさん触れる本巻。1/12ドールを所有する苔むすさんや自分でドールをカスタムする愛生子ちゃんなど、ドールへの想いを述べてくれるキャラクターがたくさん登場します。彼らのいろんな想いに触れて、それをちゃんと受け止めて、 まさしく典型的な偏屈おじさんであった真澄さんが自分の世界と価値観を広げていく様子は非常に好感を覚えるものでした。
私も実際にドールオーナーになったことで、ドールオーナーさんと交流を通し、「ドールとの向き合い方は本当に十人十色だな」と実感するからこそ、本巻のキャラクターたちが述べるドールへの想いに共感できるところがたくさんありました。
超細かい各話への感想(クリックで展開)
第10話「Let's enjoy your party」
真澄さんのドールお迎え祝いにホワイトスフィアでパーティーをしているのがめちゃくちゃ微笑ましい。身近にドールカフェがないので分からないのですが、実際にこんな感じでパーティーを開いてくれるようなカフェがあるのかな。そもそもカフェ自体の経験がないので、可能であればいつか挑戦してみたいなと思ってみたり。
ドールカフェ素敵だなぁと思うと同時に、本話は初心者ドールオーナーにとってはかなりありがたいドールのサイズについての説明をしてくれます。私にとって『ドルおじ』は一種の教本で、ドール未所持のときにはまったくドールのサイズ表記が本気でわかりませんでしたが、『ドルおじ』のおかげで規格がなんとなく分かるようになりましたね。この説明を読んで自分がお迎えするドールのサイズを検討するのはかなり有り。
パーティーには星野君とホワイトスフィアの従業員である芦花さんやエルダーさんの他にも、ナスカさんと苔むすさんが参加してくれます。ナスカさんは堂々とドールを「奥さん」と称していて、苔むすさんは「頼れる人生の先輩」と捉えている。本当にドールへの接し方が人それぞれであることを象徴している回でした。
個人的には苔むすさんの1/12ドールを所有する理由が凄く良いなと感じています。ドールをお迎えするのって凄く運命的なんですが、実際に迎えてみるとスペースの確保は難しいわ家計をかなり圧迫するわで自分の生活スタイルを顧みないといけない瞬間をちょこちょこ実感します。もちろん迎えたことに後悔はないし、簡単にできることであれば生活を変えることもあるんですが、無理に変わるのもなんとなく違うと感じている。だからこそ、苔むすさんの「憧れがあっても自分の生活に合わせる」スタイルを肯定する様子が、自分の身の丈に合った楽しみ方で良いんだと言ってもらえてる気がします。
極めつけて真澄さんがそれを「自分のカケラ」と称してくれるのめっちゃ良きなんですよ~! はぁ~、なにこの幸せ空間。全話幸せ満載って神かよ。
第11話「ナカノ・ロード」
ナスカさんから中野ブロードウェイで創作人形のパーツが売られていたと聞いて、即中野へとくりだす真澄さんと星野君。私にとって中野ブロードウェイは過去に1度だけ行ったことがある程度なのでまたいずれ是非とも行きたいスポットですね。
近年流行りのカプセルトイにも触れられていました。きっとドールオーナーなら誰もが同じ悩みを抱えているのがカプセルトイのサイズ問題。私も「ドールに持たせられるんじゃね?」と思って回したところ予想外に小さいものが多かったのは良い思い出。まぁ、私の場合はもとよりミニチュアも大好きマンなので「まぁ、いくらあってもいいよな!!」と調子乗って何度も同じ過ちを繰り返してますがね(しかも、ミニチュアと相性のいい1/12や1/6ドールに手を出してる)。
中野ブロードウェイで星野君とはぐれて迷ってしまった真澄さんがドールショップで安心するシーン。実際の中野がどういうところなのか分からないので、実際問題こんなに迷うのだろうかと思いつつ、このシーンで真澄さんが立派にドール者になっててニッコリ。
ちなみに、大阪の日本橋で雑居ビルに店舗を構えるドールショップを「本当にここか?? こんなところにあるんか!?!?」とドキドキしながら探したので、ドールが視界に入るだけで安心するのはガチ。
第12話「君はエイリアン」
ちょべりばギャルの久保田嬢と愛生子ちゃんが初登場。
久保田さんは、たとえ相手がおじさんであってもドール好きを馬鹿にしない。使っている言葉がギャル成分強めなので真澄さんは思わずエイリアンと彼女を称してますが、おじさんに偏見を持たない時点で女神確定です。こんないい女現実でおるんか??
そして、超が付くほどの褒め上手。そりゃあ真澄さんもこの顔になる。真澄さんはきっとスターレットを見せるにあたって非常に勇気を出したからこそ、久保田さんのストレートな誉め言葉にときめいたんだと思う。
ただそのあとの発言はまだまだだね! 久保田さんの単眼ドール「みきぷる」を見て思わず「エイリアン!」とつぶやくのは失礼すぎる男である。まぁ、おじさんだもんね。日々アップデートしているからといってそんなに簡単には直らないか。
実際のところ私も未だ単眼や奇形ドールを実際に見たことがないので、どんなものなのかはちょっと気になります。ドールは全般可愛いと思っているのですが、奇形ちゃんドールで1度かなりホラーテイストの子を見かけたことがあるんですよね(確か、虫モチーフだった気がする)。その子は初見のとき結構「怖い」って感じたので、実物を見たら少し黙っちゃうかもしれない。ほんとにドールっていろんな嗜好が反映されているよなぁと思いますね。
第13話「点と線」
ドールカスタマーで、スターレットのことも認知している愛生子ちゃん。彼女のカスタムドールである「瑪唖」と「みきぷる」はどちらも一般的なドールとはかけ離れていて、真澄さんは瑪唖の登場に思わす息をのみます。ただ、今度はみきぷるちゃんを見たときのように失礼な発言をしませんでした。早速成長が感じられる。凄いよ!真澄さん!!
本話のみどころは、カスタマーならではの視点でドールを愛する愛生子ちゃんですね。彼女は「心の中のもやもやを呪いのようにぶつける」と語っていて、彼女のドールである瑪唖は実際にかなり悪魔のような様相をしています。
そして、注目したいのがカッターナイフの描写。これより「カスタムといいつつ、ただドールを切り刻んでいるのかもしれない」「彼女はドールを大切にしていないのかもしれない」と思わせるのです。愛生子ちゃんがドールへ抱く思いは、ただの愛情だけとはとても言い難く、もしかしたら怒りや憎しみのようなマイナスの感情が混在しているのかな……。
同時に、彼女の行き場のないストレスを安心してぶつけさせてくれるのがドールなのかなとも思いました。たぶん愛生子ちゃんにとってのドールとは「巨大な受け皿」。ドールがすべて受け止めてくれると信じて、自分の形容しがたい素直な気持ちをドールにだけは伝えられる。一見するとドールを愛していないように見えるその行為も、信頼のもとに成り立ってるのかなと思えば、ものすごくドールを大切にしているんだなと実感します。まぁ、あくまでも私の解釈ではあるんですけどね!
だがしかし全てを持っていくのはこの男~!! 矛橋真澄だ~!!!
いや、真澄さんはおじさんだし人生経験があるとは思ってるよ? でも、つい先日まで空っぽだったんだよな?? 今話のタイトル「点と線」ってなんぞやと思ったんですけど、真澄さんの言葉効いて納得の嵐喝采。何このイケオジ~!! 惚れてまうやろ!!!
第14話「まちぼうけ」
本話は真澄さんとはぐれてしまった星野君視点で進みます。正直ね、星野君怒っていいよ。真澄さんここに来るまでにいろんなポカやりまくってんぞ。遅刻、無連絡、あと「4階のまんだらけに行く」って言ってくれてたのに聞いてなかった可能性すらある。あれ、やっぱこのおじさん1度ヤキを入れてもらうべきでは……?(華麗なる手のひら返し)
1人で中野の店舗を見回り、軽率にカード切りかけてる星野君に爆笑必須の面白回かと思いきや、3巻を読んだ今となってはなかなかに星野君の闇が発揮されていたなという印象です。
なお、初見のときには星野君のお節介って正直初心者ドールオーナーにとってはありがたいの一言に尽きるなぁと思って読んでました。マジで星野君みたいな人が身近にいたらドル活が楽しくて仕方ないはず。 もちろん個々の性格によるところはあると思いますけど、私は基本的に自分から積極的に質問できないタイプなので、ぐいぐい来てくれる人はありがたいですね。
ちなみに星野君は英語も喋れる。イケメンでぐう聖で頭もいいとか最強かよ。
第15話「Hide and Seek」
アンティークショップ「あじさい」でスターレットのパーツ探しをするお話。ビスクドールって実際にどういう店舗で売っているのか想像できていなかったんですが、やっぱり普通は骨董屋さんだよねと納得。基本高価なものしかないイメージなので冷やかしにしかなれないだろうなと入れなかったのですが、実物のビスクドールが置いてある店舗にいつかは行ってみたいなと思いました。
この指摘がまさにその通り。お迎え前にほぼ必ず宣材写真を見て購入するので、それに引っ張られておんなじ雰囲気のドールになるかと思ってたんですが、そんなことは全くない。どちゃくそ自分の好みにウィッグや衣装を組み合わせている。もちろんどんな姿でもドールは可愛いんですけど、オーナーの嗜好が絶対的に反映されるので、決して同じようにはならないんですよね。
ちなみに、私はスターレットに関してなら真澄さん派。前任オーナーの暗黒物質さんの大胆なスターレットも悪くはないけど、天使ちゃんのイメージがもう変えられない。
いや、でもここで一番注目すべきポイントは、同じドールなのに絶妙に異なるドールとしてスターレットを描けるさとうはるみ先生の技術力の凄さだな……。
本話は物語的にも大きく前進する回なので、ワクワク感も満載でした。真澄さんの切なる思いがたぶんスターレットに強く結びついているんですよ。「なんでわかるねん!」などというツッコミは野暮なもんってなわけだぜ!(抗えなかった関西人の性)
第16話「ドールメイト」
絡まりやすいドールウィッグのお手入れがサクッと学べる神回。たぶんこの回を見てドールウィッグのお手入れをした人もきっと多いはず。初心者にとってドールのメンテナンスはどういうタイミングで、どうやればいいのか全く分からないので、こういう回があると大変ありがたいんですよね。
ドール趣味に浸っていて基本的に楽しいことばかりなんですが、1点だけ苦労していることがあって、それが情報集めなんです。
メンテナンスの方法とか、ドールを持ち出すときのカバンとか、一般的なドール界隈のマナーとか、知っておきたいことがたくさんあるんですけど、案外調べるのは大変。情報としてはめっちゃ少ないんですよ!!
たぶん、世の中のドールオーナーさんが優しいのが原因。ドール界隈ではね、星野君大量発生してるの。
実際私もドールをお迎えしてから色々失敗してるんですけど、その中でも印象に残っているのがドール本体へ色移りさせちゃったこと。「やってしまったな……」と半分諦めモードで新しいボディを買おうかと思ってたんですが、同時期にオーナーになった初心者フォロワーさんが失敗談語っていたので便乗させてもらったんですよ。そしたら、その失敗つぶやきに対して、解決案提示してくれる先輩オーナーがわんさか現れてくれたんです。いや、ドールオーナーさん優しすぎる。もうハチャメチャに親切すぎるんです。ほんとドールオーナーさんのやさしさにとにかく感謝しましたね。
ただ、これは視点を変えると界隈内で助け合いが素晴らしいがゆえに個人間で収束しちゃってるってことなんです!!! いいことなのに情報としては不足する原因になってしまうなんて!! なんてこった!!!
だからこそ、こうして紙媒体でしっかり説明載っているのが手軽に読める『ドルおじ』すげぇなって思うわけですね。スターレットはビスクドール(キャストボディ)なので色移りなどは比較的しなさそうですけど、いずれ色移り対策などに関しても取り上げて貰えないかなぁなどと期待しています。
さて、あまりにも素晴らしい知識満載回なのでついついそちらへの感想が主になってしまいましたが、本話の見どころはここだけではないんですよ。
今回は、誰よりも優しい聖人星野君の闇が垣間見える回なんです。いつもあんなににこにこしてる星野君が1ミリも微笑んでいないだなんて事変だよ!! 許せねぇ……! 俺らの星野君にこんな顔させる仕事ってなんだよ……!!!
怒り狂う私に反して真澄さんは「星野君のためにも自分にできるせい一杯をやろう」と決意する様子が印象的でした。もうっ、もうっ!! 無遠慮に他人の悩みに踏み込まないあたりやっぱこの人おじさんなんだよ!! 人生の頼れる先輩なんだよな!!! はぁ、マジで尊い回でしたね……。
3巻感想
ドールそのものへの焦点が続いていた1,2巻と比べると、ドールオーナーである人間たちに焦点が当たった本巻。特に、初心者の真澄さんを常に優しく導いてくれていた星野くんをメインとして物語は進んでいきます。
変わらないドールに癒される反面、日々目まぐるしく変わる現実。他者とのコミュニケーションに疲れ、そんな辛さに押しつぶされそうな時、助けてくれるのもまた人であることを、本巻では伝えてくれているような気がしました。
誰だって他人を完全に理解することはできないもの。だからこそ自己開示をしながら、時にはぶつかり合いながらも他者を尊重して関係を築いていく。
きっかけは1体のドールだったかもしれないけれど、他人を理解しようと歩み寄ることで、煙たがられていた同僚たちとのコミュニケーションがうまく取れるようになっていく様子も見所の1つだと思います。
超細かい各話への感想(クリックで展開)
第17話「チームメイト」
クレジットカードの請求額見てアホになるの絶対にドール界隈あるある。正直な、お洋服1着が1万円とか見ても金銭感覚バグってるから安く感じてくるわけよ。それで調子に乗ってたらいつの間にか積み重なって10万超えてたとか普通にあるの。流石に真澄さんみたいにアンティークドレッサー買うことはないけど。
引き続き、星野君が沈んでいる状況で、自分に何ができるかを真剣に考えている真澄さん。心配のあまり真澄さん自身も周りから心配されるようになっていて、職場の同僚たちが気にかけている様子が微笑ましかったです。真澄さんが真に嫌われていたら完全無視されるとこだよ、ここ。たぶん少し前に真澄さんなら声掛けてもらえることもほとんどなかったんじゃないかな。
さて、これまである意味では一番おおっぴろげに真澄さんを批判していた同僚の「新井」さん。厳しいながらも悩んでいる真澄さんを叱咤激励するようなアドバイスが光っていましたね。時期が丁度クリスマス・年末シーズンだったのも相まって、特別な人に特別な贈り物をする意義を力説する。ついでに新井さんは相手が誰か知らないのでちょこちょこ自分の希望を伝えているのが面白いところ。等身大のキャリアウーマンって感じで好感が持てます。
何気に新井さんのアドバイスを元に、聖夜の街でプレゼント探しをする真澄さんの選択肢として腕時計があったのが良かったです。
所変わって、たまたま入った個人店「ガジェットモード」でホワイトスフィアの店員さんであるエルダーさんと出会います。椅子専門のエルダーさんのお眼鏡にかなうカケラは果たして見つかるのか。エルダーさんはするりと回答を避けた印象があるのでたぶん彼女も色々と思うところがあるんじゃないかなぁと感じています。いずれ彼女を掘り下げる回も来て欲しいです。
第18話「ソウルメイト」
星野君の職場での扱われ方がかなり心に突き刺さる始まり方。努力しても認められずに空回って、都合のいい人材として消費されていく。この消費される人材っていう描写がやけにリアルで、鬱屈とした気持ちを外に吐き出せずに苦しむ星野君が本当につらそうで堪りませんでした。
こういう経験は恐らく真面目で相手の言葉を信じてしまう人に多いのだろうと思います。「結果を出せば希望の部署に行ける」なんて、数年社会にもまれて働いた身としてはほとんど叶うことのない戯言だと私は思っています。自分では結果を出すために色々提案して、実行して、ごく少数の人に認められて……。なんとなしに結果を作ったと思い込むんですけど、企業はいつだってドライです。極端なレベルの結果を出さないと評価してくれないんですよね。ましてや星野君の場合、上司が星野君を見てくれていないのでどれだけ努力したって無駄でしょう。たぶんこの上司もきっと初めは歩み寄ろうとしていたはず。飲み会に誘っていたわけですし。断ってしまった星野君もコミュニケーションという意味では落ち度があったよなと思うんですが、より権力が強い上司が部下をないがしろにしているので個人的には上司へのヘイトが高まりましたね。でも、これって割とよくある現実。
個人的には電話が鳴っているのに、星野君がいるから出なくても良いとでも思って談笑している社員たちの描写に1番腹が立ちました。無性に怒りが込み上げたのは、たぶん私にも経験があるからでしょう。毎度細かな事務作業を押し付けられてちゃんとこなしていても、結局愛想のいい人ばかりが得をするっていうか。
人間って極端なほど自分に都合のいい面しか見ない人が多いんです。私も都合よく解釈することばかりなので決して人間ができてるとは言えませんが、どちらかといえば人づきあいが苦手なタイプなので社会になじめない気持ちはよく分かります。本当に星野君、辛かっただろうな……。
このシーンでは「星野君辞めた方がいいよ!! そんな会社は自分の人生の癌だ!!」と何度も思っていました。いやほんと、ときには我慢も必要だけど3年もいて何も評価してくれないならいるだけ無駄だから自分のために時間を使ってほしいと切に思いました。
追い詰められた星野君を救うのはこの男!!! 矛橋真澄ィ!!!!!
ぐあー!!! もう、もうっ!!! このシーン何度読んでも涙無しには語れないんだよ!!!!!!
真澄さんはずっと星野君に助けてもらっていたと感じてた。けど、実際には星野君も真澄さんに助けられていた。友人だとか家族だとか同僚にしてもそうだけど、お互いにリスペクトしあって大切にしあわないといけないのよね。そこに年齢なんて関係なくて、たった1人の何物にも代えられない個人として対等に関係を築いている2人が素敵で、本当に大号泣でした。
増量ページのどんでん返しも必見! カッコいいぞ、星野君!!第19話「真澄ライジング」
初野外撮影に真澄さんと星野君が出かける話。日の出撮影ってドールの野外撮影に向いているんだなぁとしみじみとしました。私はドールを手に入れて真っ先にしたかったことがドールを連れての旅行だったんで、奇妙なほど野外撮影に対してのハードルが低かったんですが、この話を読んで普通はもっと緊張するもんだよねと思いました。いやマジで今になってみると当時の私えげつないレベルの強靭メンタル持ってんじゃん……。常日頃ぬいを連れ歩く奇行っぷりを如何なく発揮してたので常識がおバグり申しておりましたのよ、うふふ。
本話はスターレットとペリメニの2人が本当に可愛い!! ドールは1体でも十分可愛いんだけどね、増えるとその威力も倍増するのよ。見つめあうお写真が現実で欲しいです。
あと、凄く欲しいなって思ったのが椅子ですね。たぶん先生のX(旧Twitter)で紹介してくれていたので現実に個人ディーラーさんが制作しているお椅子なので、その気になればお迎えも可能。ついつい小物より先にお洋服ばかりを購入してしまう女なので、今後はドール家具も積極的に探していきたい所存。そんでもって野外撮影時でもササっと小物を使いながら撮影できるようになれるといいなぁ……。
でもこれは草。本人はいたって大真面目なのも相まって大爆笑しました。
第20話「小さな星の夢」
トビにやられて病院送りになったことがきっかけで、過去スターレットのオーナーであった暗黒物質さんの記憶を覗き見ることになります。ドールを通して真澄さんの夢にちょくちょく現れる女の子の正体がますます気にかかる一方で、赤ちゃん言葉でスターレットにメロメロなおじいさんの登場に笑いましたね。
うん、正直な感想はね、なかなかにヤバいなって。第三者視点で見てるとちょっとキモイし、変質者といわれても否定できん。でも、たぶんこれ私もドール撮ってる時こういう感じなんだよなぁ……。常に「ふへへ、うちの子きゃわすぎマジやばたにえん」とか思いながら撮ってるし、絶対に鼻の下伸びてる。他人に見せられない程度には、いつもゲヘゲヘしてますね。
まぁ、でもたぶん全世界共通でドールオーナー皆こんなのだよ(ド偏見)。
また、本話はスターレットが傷つく(物理)お話でした。どれだけ大切に扱っていてもドールはある意味消耗品。傷が付いたり、変色したり、些細なミスで破損させてしまう可能性は絶対的にある。私も初めて失敗してしまった時の落ち込みっぷりは本当に真澄さんと同じくらいで、「ごめんよ、ごめんよぉ……」と何度も謝った。少しずつ慣れてくると油断からかミスも増えるので本当に気を付けたいなと思います。
第21話「手に入れた幸せ」
ウィッグ洗濯に引き続き、お洋服洗濯回でした。初めての星野君ポンコツ回ともいう。星野君ってドールに関しては何でもござれ!と思ってたので、初歩的なミスをしてるとこ見ると結構嬉しく感じるよね。
ドールに限った話でないのですが、本来洗濯を前提として作られていないものって洗おうとするのに勇気がいるんです。私の場合なら相棒と称している「リドルぬい」がいるんですが、洗って色が落ちたり変色したりするのが嫌すぎて、何年も連れ出してるのに消臭スプレーと表面をアルコールウェットシートで拭くくらいしかしていないんですよね……。流石に汚れが目立ってきていてどうしようかなとか考えています(たまに「買い替えれば?」とか言われるけど、他の子を買うっていう手段は絶対にないんだよ。我が家に来たこの子がウチの子で、いろんな思い出がある子だからね)。
まだドール服は綺麗な状態のものばかりなのでお洗濯した経験はないのですが、今回の話を読んでいずれお洋服の洗濯もしていくことになるのかなぁと思いました。柔軟剤をドールのイメージに合わせて変えるのもいいかもしれません。
あと、猫吸いならぬドール吸いが面白ポイント。この男、本当に日に日に面白くなっていく……サイコーじゃねぇーの。無意識的とはいえ友人が着ている前でこれはなかなかにチャレンジャーな行為ですよね。星野君が引くわけでもなく、めちゃくちゃ微笑ましく見てくれてよかったね!
第22話「おしえて、愛生子ちゃん」
抉れてしまったハンドパーツを修繕するために愛生子ちゃんに助けを求めて、久保田邸にお邪魔する回。この親にしてこの子ありを体現するかのような久保田さんのお母さんも登場して、どんどん作中の人物が増えていく。それなのに真澄さんの周囲に集まる人は皆真澄さんを否定しないので、安心して趣味に没頭できるのがいいなと思いましたね。
あと、久保田さんの母であるやすえさんのハンドメイド技術最強すぎるね。愛生子ちゃんのドレスは以前から作っていたかもしれないけれども、普通に売り物レベルの執事服を2着も徹夜で仕上げるって恐ろしい行動力。ついでに英国式アフタヌーンティーも用意できる。え、才能の塊? その才能のカケラでいいから分けてくれ!
本話ではカスタマー愛生子ちゃんの実力もピッカピカに光り輝いている上に、相変わらず初心者向けの知識も満載で素晴らしかったです。日常ではなかなか使わないであろうペンサンダーなどが登場するので、実際に自分でできるかは未知数ですが、将来カスタマーになりたい人にとってはこの回だけでも本作を読む価値があるレベル。
それから個人的に物凄く気になってた稼働ハンドも紹介されました。以前アイドール(ドールイベント)で見かけて、買うかめちゃくちゃ悩んだものの、ネジっぽい装着部が気になって辞めちゃったんですよね。でも、自在にハンドが動くってことは凄く生き生きしているように見えるわけですよ。ポーズの幅もきっと広がる。ああ~!! 買っておけばよかった~!!!
第23話「邂逅」
この作品のおじさんはどうしてこんなにも面白い人が多いのだろうか。正直前々話でなかなかHIGHなおじいさんとして登場していたので、多分普通ではないのだろうなと予想していましたが、斜め上に面白さを爆発させていました。暗黒物質こと、「黒井又吉」さん。
ようやく居場所が判明して、スターレットの前任オーナーである黒井さんに、パーツの行方を聞こうとしていた真澄さんたちなのですが、彼が指定してきた場所はなんと病院。年齢が年齢だけに恐らく苦渋の決断でスターレットの後継者を募ったのかなぁ……などと思いましたが、一番面倒な病名は「中二病」でしたね。入院していることを考えれば恐らく持病など年齢特有の病気も患っているとは思うものの、よく中二病をこの年まで拗らせられたもんだと思わず感心。
個人的に気になったのは、おじさん二人がメチャきゃわなドールを取り合ってる光景を見て一般のナースさんたちが何を思ったのかですね。 普通に考えればこの光景はハチャメチャにシュール。「何だこいつら……」と思っても無理はない。
いや、でも黒井さんの奇行に悩まされているみたいだから、今回も別に何とも思わなかったのかもしれない。それほどまでにナースさんたちを呆れさせてる黒井さんって……。「あじさい」のてまりさんは彼と優雅にお茶してる感じだったから絶対に紳士だと疑わなかったよ……。いや、こいつぁもしや紳士は紳士でも変態紳士の分類か……。
ドールを手放す事情は人それぞれ。特に理由がない場合もあれば、本当に苦渋の決断で手放す人もいる。黒井さんはたぶん後者。だからこそ真澄さんがスターレットを連れて現れたときも目を輝かせていたんだと思う。私はまだドールを迎えたばかりなので手放すという選択をとりたいとは思えませんが、将来的には手放したりするのだろうかと黒井さんを見ていると考えてしまいます。ただせめて手放すのであればちゃんとドールを愛してくれる後継が見つかればいいなと思う。
真澄さんは初めの取引で黒井さんを不快にさせてしまった後継者だけれど、今はスターレットを愛して彼女と出会わせてくれたきっかけの黒井さんに感謝と敬意を抱いているはず。何より真澄さんの周りにはドールを愛するドールオーナーたちが集まって、真澄さんを支えようとしてくれている。良い人の周りには自然と良い人が集まると思うんですよね。真澄さんの友人たちを見ればきっと彼がスターレットを深く愛していることも黒井さんに伝わるだろうと思います。いつか黒井さんとスターレットを囲んでゆっくりとお茶してほしい。
まとめ
ただのドールの漫画と侮るなかれ!
ドールはメジャーとは言えない趣味のひとつとして認識されがちですが、その趣味にかかわるドールオーナーの多くは1人1人真剣に想いを抱いて自分のドールと向き合っています。
それは、自身の幸福に繋がり、他者への愛情をかけるきっかけにもなり得ます。むしろ、ドールは人型をしているからこそ他の趣味よりも人への優しさを与え、受けやすいかも。
本作は、そういったドールを通しての人間的成長をこれでもかというほど丁寧に描いています。だからこそ読んでいて気持ちがいいし、優しい気分になれる。そして、自分もまた誰かに優しくしたいと思えるのです。
ドールオーナーとしてのあるある話に笑い、人としての悩みに共感して感動できる。そんな、素敵な作品です。
私は本作に出会えて本当に素敵な経験をさせてもらえました。ドールオーナーとしてはまだ未熟者ですが、真澄さんと一緒に人間的にも成長しながら、胸を張ってドールが大好きですといえるような存在になれればいいなと思います。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
気になった方は読むんだ!!!!